ある兄弟とピクシブさん

あるところにピクシブという八百屋がいました。
ピクシブさんは農家の好意によって無償提供された野菜を売り物にしてお金を得たいと思っている、そんな八百屋でした。
ある時、知り合いからうまい儲け話があると教えられ、
自称現代アーティストのカオス・ラウンジ兄弟にアートの材料として自分の店の売り物を提供することにしました。
また、彼らの活動のサポートもしました。
順調に有名になっていくカオス・ラウンジ兄弟。
彼らが有名になればなるだけピクシブさんの懐は暖かくなっていきました。
仲良く写真も撮りました。
一緒にお祭りもしました。
もちろんアート材料はどんどん渡しました。
ピクシブさんは毎日お金で枕を高くして過ごしていました。

しかしそんな日々も長くは続きませんでした。
カオス・ラウンジ兄弟の悪行が世間に知れ渡ったのです。
次男の梅が他の人や企業の作物をグシャグシャに混ぜて現代アートを作っていたこと。
三男の嘘が他の人や企業の作物を破いて刻んで踏んづけて水で濡らした現代アートを作っていたこと。
長男の黒の「作物を奪われることで他の畑が潰れてもしょうがない、ごめんねはない」の失言も広まりました。
悪行を知った人々は、怒りと悲しみから彼らを非難しました。
ある村の人々は彼らの発言に皮肉を込めて同じようなアートを作って遊びました。
別のある村の人々が彼らの経歴を調べたところ、ピクシブさんと深い関係であることを見つけました。
すでにカオス・ラウンジ兄弟に多くのお金をつぎ込んだピクシブさんは彼らを捨てられません。
すでにカオス・ラウンジ兄弟からお金を得かけていたのでピクシブさんは彼らを捨てられません。
ピクシブさんは彼らを匿うと、詰め寄る人々からの質問や意見や忠告を無視しました。
その時、不用意に許してしまったのです。
変わり者たちを。
変わり者は本当に変わり者です。
食事もとらず一日中知らないおっさんの絵を描き続けました。
言葉もなく描いては踊り、たまに打ち上げ、また踊ってまた描く。
元いた村の村長は彼らを許さず家を焼き払いやっと追放したそんな変わり者です。
そんな変わり者をピクシブさんは許してくれた。
初めて許された変わり者は喜び勇んで、6年の間作り続けた知らないおっさんの絵を手にピクシブさんの家にやってきました。
「許してくれてありがとう!」
そういってピクシブさんの家におっさんの写真を投げ込みました。
「許してくれたありがとう」
そういってピクシブさんの家におっさんのコラを投げ込みました。
「許してくれたんやなwありがとうやなw」
そういってピクシブさんの家におっさんの絵を投げ込みました。
周りで見ていた人も一緒になって色々と投げ込みました。
お祭りが始まったのです。

最初はいろいろな人がピクシブさんを応援してくれました。
よく知らないけど変わり者はなんてひどい奴らなんだ!
よくわからないけどピクシブさんを責める奴が悪い!
そう言った人もたくさんいました。
たかが数日の馬鹿騒ぎ、みんなそう思っていました。
しかしいっこうに勢いは止まりません。
投げつけては新しい絵を描いて、描いては投げつける。
ピクシブさんが何度捨てようとも、次の瞬間には同じ物が転がっているのです。
ピクシブさんはここにきて恐ろしくなりました。
以前に怒りの抗議は受けましたが、こんな経験は初めてです。
ある夜には様々な者が駆けつける大騒ぎになりました。
みんな笑顔で駆けつけるのです。
そこで気がつきました、だからこそ変わり者だと。
そこでみんな気がつきました、だからこその変わり者だと。
そんな時、カオス・ラウンジ兄弟を調べていたある村の者がピクシブさんが主催した豆腐祭りの優秀作が、
カオス・ラウンジ兄弟の次男「梅」の作品に使われていたのを見つけたのです。
その祭りの規定では
「豆腐を作ったという事実は放棄してください」
「豆腐は加工しやすいように水切りをしておいてください」
「うちの店と知り合いにはあげます」
などなど。
まるで梅に与えるようだ、村の者は思いました。
そしてそのことは瞬く間に、豆腐業者に広がりました。
ピクシブさんに卸していたある豆腐業者はもうやってられない、そう言い残して出て行きました。
その豆腐が好きな人も離れていきました。
もちろんこの騒ぎをよく思わない人もどんどん離れて行きました。
人が多い豆腐業界にこの騒動は瞬く間に広まり、これまで話を知らない人の耳にも届くことになりました。
これはいかんと、ピクシブさんがやっと表に出てきても質問に答えられず逃げ帰る始末。
周りの人々は呆れました。

どかん にゃーん
どかん ぷはー
どかん 息できない
今日も降ってきたその音に、ピクシブさんは耳をふさぎました。
カオス・ラウンジ兄弟を匿っていることが知れ渡ってから既に十日過ぎ。変わり者の勢いは相変わらず止まりません。
知らないおっさんを投げつけてきた者。
それに便乗してカオス・ラウンジ兄弟の中傷絵を投げつけてきた者。
よく知らないけどよくわからない物を投げてきた者。
自らこめかみに銃を押し当てていた者。
みんなBAN!と撃ち殺したはずでした。
投げてきた物を投げ返し、無視し、破り捨てました。
それでも毎日毎日、ひっきりなしに「現代アート」は届きます。
ピクシブさんはゆらりと立ち上がると、理路整然と並んだ「現代アート」を眺めました。
「これはボクの権利を侵害しているよ」
犬が言いました。
削除。
「これはボクの権リをシン害しているヨ、アト18禁」
蝉が言いました。
削除。
「これはボクノケンリヲシンガシテイルヨ」
ピクシブさんはつぶやきました。
削除。
犬もいなければ、虫もいない。
一人きりの部屋で今日もピクシブさんは「現代アート」を眺めます。
もう何を削除していいのかもよくわかりません。
周りからの声や連日の削除作業で心も体もピクシブさんはへとへとでした。
「もう・・・隠してしまおう・・・」
そうしてピクシブさんは梅を隠そうとしました。
「自分はカオス・ラウンジ兄弟とは一切関係ありません!」
そうしてピクシブさんは自分の罪を隠そうとしました。
これで収まるだろう、そう思って。

どかん 許さないよ
どかん 絶対に許さないよ
どかん どかん どかん どかん・・・

それでも知らないおっさんは今日も届きます。

どかんどかんどかんどかん・・・

ある兄弟の物語

あるところにカオス・ラウンジという兄弟がいました。
彼らは努力はしたくないけれど、有名になってちやほやされてお金持ちになりたいと思っていました。
ある時、他人の畑から作物を盗みそれで絵を作ったところ大層誉められた事に味を占め
毎日他人の畑から作物を盗むとせっせと現代アートを作っておりました。
次男の梅はいろいろな人の畑を荒らしてはその作物をぐちゃぐちゃに混ぜて、
三男の嘘は他人の作物を踏んづけたり切り刻んだり水で溶かしたり、
二人より絵が描けないが口がうまい黒は二人の作品がすごいとおおぼらを吹いていました。
それを見ていた職業不詳のアズマさんは「これは金になる」と思い、知り合いの八百屋のピクシブさんと新聞屋のビジュツテチョウさんを呼び寄せました。
ピクシブさん、彼らにアートの材料をあたえておくれ」
「わかりましたよアズマさん」
そういうとピクシブさんは、自分の店の商品を、制作者の許可無くカオスさんに自由に使っていいことにしました。
「ビジュツテチョウさん、彼らを宣伝してあげて」
「わかりましたよアズマさん」
そういうとビジュツテチョウさんは、自分の新聞に超すごい現代アーティストとカオスラウンジを載せました。
事情を知らない人々は「すごいのかな?」と疑問に思いつつも次第にカオスラウンジは有名になっていきました。
すでにカオス・ラウンジ兄弟の作品を手に入れていたアズマさんとピクシブさんとビジュツテチョウさんはウハウハです。
彼らはカオス・ラウンジをどんどん宣伝しました。
カオス・ラウンジ兄弟はどんどん有名になり祭りをどんどん開催。兄弟もうっはうはです。
そんなある時2011年、アズマさんはカオス・ラウンジ兄弟の梅に言いました。
「会社に飾るからでっかくてすごいの描いてよ」
梅は快諾しました。
しかし有名になった影響で梅は慢心していました。
ただでさえ無い技術もモノを探す目も常識も何もかも失っていたのです。
彼は適当に作品を作りました。
適当に見つけきた珍しい芋をただただ貼り付けました。
それを見てアズマさんは言いました。
「マスターピース!」
梅は喜んで芋を作っている村をみんなに教えて回りました。
芋をおいてある倉庫も教えて回りました。
そんな彼らを芋を作っていた村人たちがついに見つけました。
「勝手に持って行くな!勝手に畑を教えるな!」
彼らが怒り心頭なのを梅は理解できません。
困った梅は黒に任せました。
黒は芋を作っていた村人たちに言いました。
スーパーフラットアーキテクチャ
黒の不思議な言葉に芋を作っていた村人は意味がわかりません。
「持って行っちゃいけないって看板はあるけど柵がないから持って行っても問題ない、ごめんねはない」
そんな黒の言葉にますます怒りがわいてきました。
嘘はただふわふわしていたので無視しました。
そんなとき芋を作っていた村人の所に、村長が村から追い出した変わり者がやってきました。
変わり者は、毎日毎日食事もとらずただただ知らないおっさんの絵を描いては踊っているような変わり者です。意思の疎通はできません。
だから村長は彼らを追い出しました。
そんな変わり者はおもむろにカオス・ラウンジ兄弟の前に立つと彼らの顔を紙に描き始めました。
そして踊りました。
描いては踊り、踊っては描き、それを数日間続けました。
いつしか村人も一緒になって踊り始めました。
カオス・ラウンジ兄弟は怖くなりました。彼らの浅はかな知識では理解できません。
彼らは言いました。
「許してください。」
変わり者は答えました。
「こちらこそ許してくれてありがとう」
意思の疎通は不可能でした。

そんな中、他の村の人々が彼らが行った祭りの状況を調べていました。
調べれば調べるだけ、他人の作物を踏みにじるひどい祭りばかりだとわかりました。
祭りに中には、お金を偽造していてそれを他人に売っているものもありました。
ふわふわしているだけだと思われていた嘘も下衆であることがわかりました。
作品を作ることを依頼していたアズマさんはいろいろな人からの質問に
「ブロック!ブロック!!」
と叫んで耳をふさぎました。
とてもいい年した大人の振る舞いには見えません。

そんな時、ビジュツテチョウさんが宣伝した記事の中に、使ってはいけないものを使いまくった作品を見つけました。
巨大企業の看板、昔の天皇陛下の写真、いろいろな人の作ったモノ、etc。
調べていた人々もどん引きです。
カオス・ラウンジ兄弟に問うても無視ばかり。
しょうがないので法律に基づいてそれらを通報しました。

ピクシブさんも彼らは調べました。
ピクシブさんはいろいろな人からの質問を無視しました。
そこで人々は策を練りました。
ピクシブさんの所には売っていい物といけないものの基準があります。
もちろんカオス・ラウンジ兄弟は売ってはいけないものです。
同じような売ってはいけないものと一緒にピクシブさんに言いました。
「この二つは売ってはいけないものだよ、どうするの?」
ピクシブさんはカオス・ラウンジ兄弟の作品は残しましたが、もう一つは消してしまいました。
カオス・ラウンジ兄弟を匿っている疑いは濃厚です。
そんな疑いの目を感じたピクシブさんですが、カオス・ラウンジ兄弟を捨てることができません。
彼らの宣伝にいっぱいお金を使っているからです。まだまだそれを回収できていません。
そこでピクシブさんは思いつきました。
「じゃあ両方許します」
それを聞きつけた者がいました。
村から出ていた変わり者です。
「許された・・・」
変わり者は感激に震えました。今まで許されなかった彼らが許されたのです。
これまで6年の間作り続けた知らないおっさんの絵を手にピクシブさんの家にやってきました。
現代アートと叫んで絵を描いてはピクシブさんの家に投げ込みました。どんどん投げ込みました。
これからもずっと投げ続けます。これからもずっと。

まだまだ物語は終わっていません、これからやってくるのです。
巨大企業による法廷闘争が。
カオス・ラウンジ兄弟は許されるでしょうか?
アズマさんやビジュツテチョウさんやピクシブさんは許されるでしょうか?
それには変わり者がこう答えるでしょう。
「絶対に許さないよ」と。